立ち往生

渓流釣りに行き、川沿いを歩くと多くの生物に会う。動物だとシカやイノシシ、イタチ、ネズミ、ヘビなど。ヘビは苦手で出くわすと思わず声が出てしまうが、少しだけ慣れてきた部分はある。そして九州、熊本はクマがいないことが何より有り難い。本州ではクマに注意を払って渓流に入られていることにただ敬服するばかり。

シカについては相当な数が渓流まわりに居ると思われ、足跡が無数についている。そしてシカの生体より遺体に出会う機会が多い。釣り歩いているとどこからか腐乱臭がしてくることがあり、近くにシカの遺体がある。夏場は強烈な臭いとなっていることもある。

一昨年大変驚いたことがある。渓流を釣り上がっていると薄っすら腐乱臭がしてきた。どこかに動物の遺体が…と思いながら注意深く歩いていたが、それらしきは見当たらない。臭いも消え安心していた。ルアーをキャストした直後、ふいに左後ろを振り返ったところ、1メートル先にシカが立っており目が合った、驚いて思わず「うわっ」と声をあげてしまった。神経質なシカと聞くが微動だにしない。よく見ると目は開いたまま、前足は立っているが後は犬の用に座ったようになっていた。目の周りにハエの様な虫が飛んでいた。どうやら絶命しているようで、有り得ないと思っていたがこれがあの弁慶で有名な「立ち往生」というものだ。勿論初めて目にする光景である。合掌して失礼した。

シカと思われる骨を川辺りで見ない日はない。生息数も多いのだろうが、そういう役割を担っているのではないかとも思う。比較的弱くデザインされており、亡くなってその遺体が肉食動物や鳥、果ては微生物といった他の生物の生きる糧となり、生態系のサイクルを循環させるという具合に。

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