イヌビワ

九州で林床に育つ中低木で最も良く見る樹木の一つがイヌビワではないだろうか。やや深い色をしており、おおよそ長さ10センチ幅5センチほどの大きめの葉を持つ。やや肉厚で常緑のように見えるが、落葉樹である。

ここは落葉樹林だったが、スギ林のような暗い環境の下でもよく見られる。日向でも見る。かなり頻繁に出くわす印象がある。赤が熟して黒っぽい、1〜2センチ位のビワとイチジクに似た実をつける。

この実は食べられるが、ビワに比べて美味しくないことから、「イヌ」の名がついている。植物名によくある「イヌ」は「劣っている」、「役に立たない」の意味があると言われ、ヒトに寄り添ってきたイヌにとっては悲しい話である。

このイヌビワにはさらに悲しい逸話があり、ビワも以前書いたように中国から輸入されたものだが、イチジクも同様である。そのイチジクが日本に入ってくる前はこのイヌビワがイチジクと呼ばれていたという。

イチジクの名を奪われ、役に立たないというレッテルを貼られた災難なイヌビワだが、そのような悲運をものともせず、各地で活き活きとしているイヌビワが愛おしく見えてきた。

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