肥後の里山ギャラリー 黒と赤、 かたつむり

「肥後古流の400年」というテーマの展示会がか開催されていた。近場での開催、無料ということもあって構えず足が向いた。

場所は熊本市中央区練兵町の肥後銀行本店に併設されている「肥後の里山ギャラリー」である。利休七哲(千利休の7人の高弟)に数えられる細川三斎(忠興)をルーツとする、肥後古流という茶の湯の流派は、利休正統の作法を伝承するといわれる。その流派に因んだ展示会ということだけで、展示の詳細を知らずに訪問した。

ホールの中には肖像画の掛け軸、三幅を除いては写真撮影が可能だった。最初に撮影したのは「茶碗」
利休の美学が詰まったとされる「黒樂茶碗(くろらくちゃわん)」どっしりとした形に、漆黒の艶が格好良い。
さらにこちらの黒樂茶碗は初代 樂 長次郎作と伝わるもの。先のものより深さがあり、漫画「ひょうげもの」の中で、利休がその黒茶碗の完成を目を剥いて歓喜し、両手で抱え上げたものに形が良く似ている。朱色の漆で金継ぎ(接着による修復)されている。黒と赤の対比が幽玄でもあり、ロックでもある。修復よる良さを初めて目の当たりにした。

黒樂茶碗にはこれまで何となく好意を抱いていたが、意外にも今回最も惹かれたのは、この赤樂茶碗(あからくちゃわん)だった。

想像ではもう少し茶色がかっているのかと思っていたが、程よく鮮やかさの抑えられた赤となっている。下から徐々に膨らみ、中央が最も幅広く、そこから上へすぼまっている。金継ぎされた後も経年と素朴さを感じさせて好感が増す。何ともバランスの良い逸品だった。

たくあん漬けで有名な沢庵(たくあん)和尚作の茶杓(ちゃしゃく)もあった。見事な飴色をした繊細な造形に息を呑んだ。


最後は「蝸牛(かたつむり)」と銘打たれた竹の花入である。花入の裏に貼り付いた化石化した蝸牛が銘の由来だが、この花入を床柱にかけた時にこの蝸牛がぐらつきを押さえる丁度よい支えになるという、意外な「用」を成している所が実に面白い。

竹という華美でない素朴な素材と長い時間の経過を感じさせる「わびさび」に、歪みや割れという可笑しみを備えている。その上に偶然の異物である化石化した蝸牛が存在するのみらず、実務を果たしているという奇跡に圧倒されてしまった。

有料級と謳われている無料動画をよく見るが、この展示会は、まさに無料での公開とは思えない「有料級」の価値あるもので、行って良かったと心底思えた。これからもかすかにでも心の琴線に触れる情報に触れた際は、それらをより多く体験し、大切に味わって行きたいと思う。

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