
熊本市中央区黒髪の立田自然公園内にある、茶室「仰松軒(こうしょうけん)」。立田自然公園は泰勝寺跡(本堂は私邸につき非公開)と細川家の御廟(墓所)を中心として、自然に成立したような池とそれを囲う豊かな森、そして奥にこの仰松軒がひっそりと佇んでいる。


静かな空間に時折響く、鳥のさえずり。そしてこの日は初冬だったため、「テーン、トットット」と小さなアラカシのドングリが度々落ちてくる、小気味よい音が響いていた。四季それぞれに異なる趣ある表情を見せてくれるこの場に依然から大変惹かれていた。その立田山の「自然」が成す景観に人の手が程よく加わった仰松軒がここにはある。
私は「手つかずの自然」よりも、人の手が加わり、相成っている空間、いわば「半自然」的な空間にが最も好みである。したがって、この仰松軒の露地(ろじ・ 茶室に付随する庭のこと)が、極上のものに見え、熊本県内で一等好きな場所と断定できる。

今回は熊本を離れる前に一度見ておきたいと思い訪ねてみた。これまで何度となく訪れ、これまでは仰松軒の露地は竹垣で閉ざされ、立ち入り禁止となっていた。しかし、今回はなんと入場OKの案内が。最後かもしれない訪問の機会に幸運な巡り合わせに軽く打ち震えて枝折り戸を開けた。

やはり凄まじく良い。木々に囲われ、外界を隔てながらも明るい。木々が払われたであろう地面は苔に覆われた二次的な自然も「山」と「家(茶室)」を繋ぐ重要な役割を果たしている。繰り返し続く人工物である飛び石や竹垣もひと欠片も野暮ったさが感じられない。素朴な佇まいの草庵は時間の経過を経て、しっかりと土地に根を張っている。「わび」と「さび」と「自然」が協奏する極上の空間である。

躙り口(にじりぐち)の側にある、塵穴(ちりあな)。穴の縁には覗き石(のぞきいし)がある。

こちらの手水鉢(ちょうずばち)は細川三斎が大事にされていたもので、豊臣秀吉、千利休も使ったことがあると伝えられる。

数年前の修復工事の際に葺き替えられたと思われる門の茅葺き。すでに苔が生えてきている。この門は池に向かって建っており、こちらが本来の動線なのだろう。

門の先に待合がある。こちらは杉皮葺き(?)のようだ。茅葺きと趣は異なるが相通じる素朴さに惹かれる。

こちらの扁額(へんがく)は細川護熙元総理の筆。

修復されて間がないとは思えないほど、時間の経過を感じさせ、わざとらしさがない。全てが極まっている。

普段は目に止まらない竹林も、ここでは驚くほど爽やかな佇まいを作っている。この竹も間引きなどで適度にコントロールされていて、作為を見せない設えなのだろう。感じ入れば入るほど全てがよく見える。





コメント
コメントを投稿