谷を覆うレース編みのような アブラチャン

渓流釣り場として、お気に入りの某支流。並走する林道を歩き進むと、直角に流れ込む小さな谷川が幾つかある。スギの人工林に覆われ、夏の日中も全体的に暗い。スギか植林されていない谷の部分にだけ、わずかな光が届いている。

その谷の上を、ふわっと緑のレースのような枝葉が覆い、微かな風に揺らいでいる。正面から見るとしっかりと葉の集団が一つの面を作っている。側面から見た薄さからは想像づらく、見る角度で大きく表情が異なる。これは谷間の限られた光を無駄なく、効率良く受けるための工夫なのだろう。
樹種の特定に難を要したが、これはアブラチャンのようである。
同じ水系の別の支流にも、林冠がわずかに空いた小さな流れの上に這い出すように枝を伸ばす姿は美しいものだった。その時は「繊細な線」として、そして、今回は「柔らかな面」として、楽しませてくれた。

そんな樹木だが、名前はアブラ=油に、チャンは「瀝青」つまり、コールタールやアスファルトを指す、これはアブラチャンの木全体に脂質(油分)が多く含まれることに由来している。軽やかな姿の裏にコッテリしたベースを持つ「あぶらちゃん」だった。



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