熊本市中央区にある水前寺成趣園(すいぜんじ じょうじゅえん)。水前寺公園の通称で呼ばれることも多い。江戸時代に造られた肥後藩主細川家の大名庭園である。豊富な湧水を引き込んだ池を中心とした、東海道五十三次の名所をモチーフにした回遊式庭園で、富士山、日本橋、琵琶湖、竹生島などになぞらえた景が造られている。

園の中央にある建物が、「古今伝授(こきんでんじゅ)の間」。かつて京都御所にあった建物を、大正時代にこちらへ移築されたものである。かつて、細川家初代の幽斎(ゆうさい)公が、智仁(としひと)親王へ古今伝授した空間と伝えられる。古今伝授とは古今和歌集の解釈などを、口頭で教授するというものである。
智仁親王は、桂離宮の造営を始められた方として名高い。現代となって、その桂離宮を細川護熙(もりひろ)元総理が、「桂(離宮)には庭の全てがある(備わっている)」と絶賛されるほどの、国内屈指の庭園である。そのルーツの一片たる、この空間を味わい、お茶を頂けたことは大変ありがたいことである。

建物まわりの植栽、延段なども、さすがの設えとなっている。
園の奥には能の舞台がある。老松が描かれた「鏡板(かがみいた)」と呼ばれる正面奥の壁が特徴的である。これほど広い日本古来の半屋外空間に初めて出会ったような気がする。神聖で厳かな雰囲気の中に、どこか親しみやすい雰囲気が漂っている感じを受けた。これまで「能」に触れたことはないが、この舞台を見ると少し興味が湧いてきた。
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