後藤是山旧居 冬の 地苔 と 縁側

熊本市中央区水前寺にある後藤是山(ぜざん)記念館。この記念館は後藤是山旧居の脇に建てられている。周辺には立派な建物が立ち並ぶ住宅街の中に位置し、豊かな緑に囲われているため異彩を放っているが、正面は蔵や商家風の機能的な造りとなっている。
記念館を抜けると、大きなモミジが植わっている。さらに、多くの木々や一面のコケに囲われるた、平屋の建物が見えてきた。
小さな池の跡の様なものがある。雨樋が引き込んであり、今でも雨の時に小さな水たまりとなりそうだ。雨水浸透桝の役割を果たし、見た目も楽しませてくれる。
玄関まで続く延段。長さが次第に短くなるリズム感が良い。
玄関から先の庭へ向う園路は石がさらに短くなり、飛び石状になっている。こちらも調子が良く好印象である。
玄関の戸や窓に格子が丁寧に施されている。それにしてもシュロチクが本当に良く似合う。
この旧居には淡成居(たんせいきょ)という銘が付いている。建物に限ったことではないが、銘がついたものには携わる方の思い入れや物語が感じられて、強く惹かれる。
この淡成居の名前は、是山が徳富蘇峰に依頼し、名付けてもらったものであり、「君子の交わりは淡々として水の如し」(出典:荘子)という意味が込められているという。
玄関脇の小部屋。小間の茶室のようでもあり、機能性が高そうな雰囲気が窺える。
床の間のある部屋の縁側。窓の外が明るい緑に光っていた。締め固まった土に自然と生えた地苔だと思うが、美しい。
やはり縁側の出隅が個人的に大好物である。室内に有りながら、庭を取り込み屋外に居るような空間である。真冬ではあったが、暖かい午後だった。長い時間をここでうっとりと過ごしてみたいと思わせる場所だった。
スツールといって良いのか分からないが、デザインの良さに惹かれた家具があった。正方形のニ段の板面を籐で巻かれたフレームが支えている。四方にある三つの金属の輪の意匠もバランスが凄く良い。
庭へ回ってみると、沢山の樹木に囲われている割には明るいことが、居心地の良さを感じる理由の一つだと思う。
外から見ても縁側は素敵としか言いようがない。
庭の最も奥にあったイチョウは徳富蘇峰から贈られたものだという。「30年近く経って初めて実をつけたが、その年は奇しくも蘇峰が亡くなった年であった」との解説があった。「淡々と」育ったイチョウなのだろうが、機を知り実を結ぶあたりは、関わる人物の徳の高さなのだろうと思った。

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